第6章 愛?愛、愛…
彼女は笑っていなかった。
いつもは笑って挨拶してくれるのにこちらを見向きもしない。
「遥ちゃん」
いつもの呼び方で呼んでみる。
彼女は俺だとすぐに感じたのか、顔をあげた。
「神谷さん…」
彼女の持ち味の明るい声が暗くなっていた。
「どうか、したの?」
「少し、疲れただけです」
彼女は疲れきった顔で笑ってくる。
誤魔化しても俺にはわかる。疲れるは違うことでだ。
「無理しないようにね?」
俺はアフレコ現場に入るフリをした。
「…恋…なん…わか…ないよ」
途切れ途切れだけど聞こえた。
恋なんてわからないよって言った。
俺はその言葉を聞いて、達央君とマモちゃんに告白されたと言う推測をした。
「俺だって好きなんだよっ」
でも、彼女におっさんは似合わない。
だから…全力で彼女をサポートする。
咲いて散った誰も知らない恋物語が、幕を閉じた。
anotherstory〜神谷side〜END