【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第10章 番外編
「その中には何か入ってるの?」
立花が肌身離さず背負っているリュックを見て、山口が聞いた。
「ええとね、絵本とか、ゲームとか……。」
立花はリュックを下ろして中身を取り出して見せる。
「あと、高校生の服。これはずっと持って歩きなさいってこうちゃんが言ってた。いつ元の大きさに戻るか分からないからって。」
「さすが……。」
「立花先輩のことについては過保護なあの人らしいね。」
山口と月島が苦笑する。
立花自身はその意味が良くわからないらしく、きょとんとしているが。
「ねーねーつっきー、これ読んで。」
そう強請るのだった。
「え……山口に読んでもらいなよ。」
「山口くんにはさっき別のやつ読んでもらった。」
立花はかわいらしいネズミの絵が描かれた絵本を持って、期待に満ちた顔を向けてくる。
見かねた山口が、助け舟を出そうとしたときだった。
「……一回だけだからね。」
「やった!ありがとうつっきー。」
立花は隣りにちょこんと座る。はやくはやく、と月島を見上げている。
「山口、このこと日向たちに言ったら許さないから。」
「言わないよ。つっきー優しいね。」
にこにこしている山口。
はあ、と一度大きなため息をついて、月島はだるそうに絵本の表紙をめくる。
「14ひきのあさごはん……。」
題名を読んだところで、立花は小さな体を丸めて、体育座りをしていた月島の足の間に入り込んだ。
「ちょっと、なにしてんの。」
「だってつっきー声小さいから。このほうがよく聞こえる。」
月島は数秒考えてから、
(大きな声で読まされるよりマシか。)
そう判断して大人しく立花を背中から抱えるような姿勢で続きを読み始めた。
(さすがのツッキーも、立花先輩には優しいんだよなあ……)
身体をくっつけて一冊の絵本に集中する二人をほほえましく思いながら山口は眺めていた。
ページをめくるたびに、立花は月島を見上げて
「あ、ちょうちょがいるよ。」
「木いちごっておいしい?普通のいちごとちがう?」
「ねずみちゃんたちかわいーね。」
小さな声で楽しそうに話しかけた。
はいはい、と月島が面倒くさそうに彼女の頭に手を置いて前を向かせると、嬉しそうにくすくすと声を漏らした。