【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第10章 番外編
人に見られてはまずいと、足早に部室にやってきてから、山口は立花の遊び相手をし、その様子を月島はそばで座って眺めていた。
さきほどから飽きもせず「あっちむいてほい」を繰り返している。
勝っても負けても、立花は楽しそうにきゃっきゃと笑っていた。
「ねえねえ」
立花が寄ってきて月島の前に座る。
何故か両手を背中の後ろに回している。何か持っているのだろうか。
すっかり二人には慣れたらしく、朝の警戒した表情は見られない。
「……どうしたの。」
高校生の立花ですら、自分のキツイ物言いで泣かせそうになったことがあるのだ。月島自身は立花が泣こうが喚こうが構わないのだが、彼女の保護者兼幼馴染の菅原に迷惑をかけるのは気が引ける。
月島はなるべく柔らかい口調で答える。
立花は両手の拳を彼の前に突き出した。
「どーっちだ。」
得意げにそう言い放つ立花。
きっと左右どちらかに、お菓子でも入っているのだろう。
傍にいた山口も近づいてきて見守っている。
「こっち。」
仕方なく、月島は彼女の右手を指差した。
ぱっと右の手のひらが開かれる。ちいさな子供の手のひらに、握られて包がくしゃくしゃになったキャンディが乗せられている。
「あたりっ。はい、どうぞ!」
「……どうも。」
月島はイチゴの絵の描かれた飴の包と彼女を交互に見る。
「ツッキー子供苦手なのに、優しいね。」
「一応先輩だからね。」