• テキストサイズ

【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)

第10章 番外編


「部室にいなって言われてたよね。」

倉庫の陰に隠れていた立花は、背後から声を掛けられて飛び上がった。

「ひい!」

振り返ると、そこには体育着姿の月島と山口が立っている。

「朝の……ええと……。」

「俺は山口、こっちはツッキー。見つかったら大変だよ?ほら、部室戻ろう。」

山口が小さな子供に言い聞かせるように優しく促すが、
立花はいやいやと首を振る。

「……おしっこ。」

「は?」

小さな声で、しかもうつむいたまま発する立花の声は二人には聞きとれなかった。

良く聞こえるようにしゃがんで彼女の顔に耳を近づけると

「おしっこしたくなっちゃったんだもん!!」

突然の大声に、山口はびっくりして持っていたボールを落とし、
月島は持ち前の状況判断能力で立花の口を手でふさいだ。

「ちょっと、大きい声出さないでよ。キミ自分の立場分かってんの!?」

「ツッキー、一応先輩だから……!」

山口が月島をなだめる。

「おーい山口!ボールあったかー?」

待ちきれなくなったらしい一人のクラスメイトがこちらに向かって歩いてくる。

月島は立花の口をふさいだまま、自身の陰に彼女を隠し、山口はボールをクラスメイトの方へ投げた。

「ごめん、ツッキーお腹痛いみたいだから、保健室連れて行くね!あとよろしく。」

「あ、そうなの?お大事にー。」

彼が背を向けてサッカーコートに戻って行くのを見届けてから、月島は漸く手を離した。

「危なかったね……。」

山口が心臓を押えながら立花を見下ろすと、彼女は黙って頷いた。声を出すとまた怒られると思ったのだろう。

「行くよ。」

月島は立ち上がると倉庫の裏に沿って校舎とは反対側に向かって歩き出す。

「え、ツッキー?」

「トイレ、行きたいんでしょ。プールのとこなら誰もいないだろうし、人に見つからないと思うから。」

「さすがツッキー!!」

「山口うるさい。」

まだきょとんとしている立花の背中を押して、山口も歩き出した。
/ 101ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp