【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第10章 番外編
「で、どうして連れてきたんだ……スガ。」
部室で澤村は顔を引きつらせる。
男の子の服を着せられて、子供の遠足用リュックを背負った立花は、バレー部の面々を見回してキョロキョロしている。
「だって、一人で置いてくるわけにいかねえだろ。中身も8歳なんだし。
ていうか小学校行くって聞かねえの。もしそんなとこ行ったら大騒動になる。」
「だからって高校連れてきたって騒動だろう。」
澤村は腕を組んで、小さい体をさらに小さくしている立花を見下ろす。
立花は怯えて、ぎゅうっと菅原の腰にしがみついた。
「だーいじょうぶだって、ちゃんと抱えて上着で隠してここまで連れてきたから。」
ケラケラと笑いながら、立花の頭をなでる菅原。
そういう問題じゃないだろう、とさすがに澤村以外のメンバーもツッコミを入れたくなるが、今はそれどころではない。
「でも、ほんとにかわいーですね!ちっちゃな立花先輩。」
一足先に着替え終わった日向が、立花の前にしゃがんで見つめる。
立花は目線を逸らして、菅原にしがみつく腕に力が入る。
「あーごめん日向。こいつ人見知り激しいんだ。誰にでもこんなだから気悪くしないで。」
「そうなんですかー。せんぱい、俺、日向翔陽っていいます。先輩は日向って呼んでましたよ。」
小さな彼女に敬語というのも違和感があったが、とりあえずいつも通り話しかけてみる。
「……ひなた、くん?」
立花が顔を上げて、小さな声で反応する。
(おお、さすが日向)
警戒心の塊となっている立花の手が少しだけ緩むのを感じて、菅原は感心する。