【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第9章 春が来るまえに
そこでようやく他のメンバーも二人のところへ駆けつけてきた。
「よかった、ちゃんと会えて。日向よく追いついたなあ。」
澤村が日向を褒める。
「なに先に帰るって。薄情だろー。」
菅原は立花の頭をこつんと叩いた。
「私、部員じゃないし……。お邪魔かなって思って……。」
ぼそぼそと俯く立花の荷物から、菅原は無断でその日配られたばかりの卒業アルバムを取り出す。
「あーやっぱり、寄せ書きページまっしろ!」
「あ、ちょ、こうちゃん!」
最後の余白のページにクラスメイトたちがメッセージを書きあっていたのは立花も知っていた。
長らく不登校だった彼女は結局親しい友達はできず、立花の卒業アルバムはまっさらなままだった。
「お前らー、ここにメッセージでも落書きでも好きなこと書いてくれ!どうせ他に書いてくれる人いないからな。谷地さんマジック持ってたよね、借りてもいい?」
「もちろんです!」
菅原の声掛けに、谷地が色とりどりのペンをみんなに配る。
真っ先に日向がオレンジ色のペンで文字を書き込んでいく。
「お前、字の大きさ考えろよ!ボゲ!」
「うっせーなー、大丈夫だって!」
「俺にも次書かせて。」
楽しそうにメッセージを書き込む後輩たちを呆然と見つめる立花。
「みーはさ、部員じゃないことこだわってるみたいだけど、こいつらはそんなことあんまり気にしてないからな。」
にやっと笑って、菅原は立花の顔を覗き込む。
「花束もらってよかったな。」
「……うん。」
暖かな日差しに包まれて、立花はそっと花の香りを吸い込んだ。