【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第8章 素直、ときどき
「俺もごめん。元気になったらまたどこか行こうな。」
「うん。」
小さく頷いてから、立花は激しく咳き込む。
苦しそうに丸めた彼女の背中を、菅原はそっとさすってやりながら
「大丈夫、力ぬいて、ゆっくり息して。」
そう声をかけると、咳は少し落ち着いた。
「苦しい……頭いたい。」
「うん、咳しすぎると余計痛くなるから、あんまりしゃべるな。」
背中をさする手を止めずに菅原はポケットから飴を取り出す。
「のど飴じゃないけど、ないよりいいべ。」
器用に片手で包を開いて、立花の口に入れてやる。
それを舌で転がして舐めると、マスカットの爽やかな香りが漂う。あまい、と掠れた声でつぶやいた。
菅原は名残惜しそうに、一度だけ彼女の頬に触れてから離れた。
「じゃあ俺、授業戻るからな。みーは少し休んだら帰れ。
荷物は俺が後で持ってってやるよ。
あ、家着いたらメールしろよ。」
仕切りのカーテンを開けて出て行こうとする菅原を呼びとめる。
「こうちゃん……。」
「ん、どした?」
「あの時みたいになったらどうしよう……。」
「ばか。大丈夫だって言ってんだろ。みーは大げさなんだよ。」
すぐ弱気になる立花を、菅原は笑いとばした。