【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第8章 素直、ときどき
「立花、ちょっといいか。」
席に座っていた彼女が顔を上げる。どこかぼんやりしているので、眠いのか?と思いつつ、用件を言う。
「進路の紙、まだ出してないだろ?早めにしろって先生が言ってた。」
「あ、うん。分かった。ありがと。」
返事をする彼女の声に異変を感じて、澤村が指摘する。
「おい、立花。声どうしたんだ。風邪?」
「うん。ちょっと喉やられたみたいで……。」
掠れた声でしゃべりにくそうに彼女は答える。
眠そうに見えたのは、風邪のせいか、と澤村は納得する。
「熱あるんじゃないのか?顔少し赤いぞ。」
「どうだろ……。薬飲んできたから大丈夫だと思うけど。」
「スガ呼んでこようか?ケンカしてるみたいだけど、あいつもう怒ってないぞ。」
しかし、立花は首を横に振った。
「ううん。こうちゃんきっと心配するし。近くにいるとうつすかもしれないから、風邪治るまではこのままでもいいかなって。」
弱々しく笑ってから、彼女は小さく咳き込んだ。
「おいおい、大丈夫か?大分具合悪そうじゃん。」
「平気。だめそうだったら自分で帰るから。」
そこで予鈴が鳴ったので、じゃあお大事に、と言い残して澤村は自分の席に戻る。