【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第8章 素直、ときどき
「昨日練習終ったあと、二人で待ち合わせて映画見に行ったんだよ。
俺が見たいので良いって言うし、時間もちょうどいいのがそれしかなかったから、ちょっとだけホラーっぽい洋画にしたんだよ。
でも全然怖くないんだぜ?ぐちゃぐちゃの内臓も出ないしゾンビだって出てこないし。
だからみーでも絶対大丈夫だって思ったんだよ。
ちょーっと斧ぶん回したり真っ暗のエレベーターに閉じ込められたりするくらいのかわいいもんだよ?R指定もないやつ。
なのにあいつ、映画館からずっと俺にひっついて離れないの。半泣きでさ。
それくらいならかわいいなーってほほえましく思ってたよ?
なのにどんどん機嫌悪くなってきてさ。
こんなの観るつもりなかったこうちゃんに騙されたってずーっと怒ってるの。
そのくせ俺が手離すとマジ泣きするからそれも面白かったもんで、からかってやったら、そのへんからどうも本気の怒りを買ったっぽい。」
「分かったスガが悪い。」
呆れて澤村がかぶせ気味に結論付ける。
「いやいや、まだ話終わってないから、続きがあるんだってちゃんと聞いて。」
「だったら部室着くまでに頼むわ。」
澤村は大股でずんずんと廊下を歩いて行く。
「さすがに俺も、やりすぎたかなーって反省したわけよ。だから今朝謝ろうと思って、
いつもみたいにみーの家に行ったの。なのにさー、あいつ俺が何言っても謝っても無視してくんの。ひどくない?
そこまでする必要ある?俺すげえ謝ったんだよ?もう意味わかんない。これ以上どうしろっての。」
そこまで話すと、ちょうど部室の前に到着した。
「だからって俺のこと巻き込むのやめてくれな。」
澤村はドアを開けて一人先に入っていく。
「大地、つめたい……。」
バタンと音を立てて閉じられたドアを見つめて、菅原は立ち尽くした。
(みーの奴、体調大丈夫かな。そういえばあの時も……。)
先ほどの澤村の言葉を思い出して、少しだけ彼女のことを心配に思った。