【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第4章 まつりのあと
「うん。選手でもマネージャーでも、試合に出ても出てなくても、みんなでバレー部なんだなって思わせてくれたんだよな。
清水は覚えてないかもしれないけどさ、
入部してすぐの頃、俺タオル忘れちゃって、困ってたら清水が貸してくれたの。
ちゃんと俺の名前も覚えててくれて。当時は部員も今よりずっと多かったし、
まだまだ顔も名前も怪しかったはずなのにさ。
俺あれ衝撃だったんだぜ。
ちゃんと見ててくれる人がいるって、支えになるんだよな。」
菅原の思い出話に、清水の記憶も甦る。
「うん。覚えてる。あのときは……。」
言ってしまおうか。
(あの時、菅原の名前を知っていたのは、当時から気になる存在だったから。
普段はそんなことしないのに、タオルを差し出したのは、
あなたの力になりたかったからで、少しでも近づいてみたかったから。)
しかし清水は思いとは異なる言葉を発した。
「あの時は、春なのに暑かったから、
タオルの予備をちょうど持っていたから。でも……」
そして、清水はこう続けた。
「私も、菅原がいてよかった。」
その言葉に、菅原はきょとんとしたが、少し頬を赤らめてこう返した。
「俺も。清水がいてよかったよ。ありがとな。」
清水の真意がどこまで通じたのかは分からない。
察しのいい彼のことだから、もしかしたら全て読まれたかもしれない。
しかし、その手のことには疎い気もするから、
やはり何も伝わってはいないだろうか。
でも、どちらでもいい。清水はそう思えた。
静かに頷いて、彼女にしては珍しくすっきりとした笑顔を見せた。