【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第4章 まつりのあと
「というわけだから、一回学校戻るけど、いいか?」
菅原の説明に、清水は大人しく頷く。
「わかった。」
「はぐれちゃったけど、花火も見れたし、まあまあ漫喫できたべ?」
「うん。……今年で最後だしね。」
そう言って清水はしみじみと花火の残り香を感じる。
「そうだなあ。なんだかんだで毎年きてたもんな。
でも、まさか清水の浴衣姿が見れるなんて、田中や西谷じゃないけど、ちょっと感動。」
菅原はそう言って、似合ってるなーと改めて褒めた。
「ありがとう。あと、これも。」
清水は先ほどの金魚を掲げて見せる。
その時、清水の肩に誰かがぶつかって、バランスを崩して小さく悲鳴を上げる。
「きゃ……!」
「あっぶね……っと、セーフ。」
菅原が腕を伸ばして倒れかけた清水を支えた。
清水はびっくりして菅原を見上げる。
「清水、大丈夫か?」
「う、うん……。ごめん。」
清水は短く謝ってすぐに菅原から離れる。トクトクと胸が高鳴るのを感じる。
二人は学校を目指して静かに歩を進めた。
少しだけ先を歩く菅原の背中に向かって、清水はこみ上げそうな思いを必死で呑み込む。
(言うべきじゃない。)
そう自分に言い聞かせて、そっと息を吐く。すると菅原が振り向いた。
「俺歩くの早い?ごめんな気付かなくて。」
そう言って足を遅めて清水に並んだ。
そんな彼の気遣いが、余計に清水の心を揺さぶる。
清水は小さく首を振って
「平気。」
それだけつぶやいて、黙々と歩いた。
誰にも知られず、終わらせる。
そう決めいていた恋だった。