【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第3章 秋祭り
「立花、お茶飲めるか?」
澤村が自販機で買ってきた冷たいペットボトルを渡す。
石段に座っている立花はそれを手にして力なく返事をする。
「ありがと……。」
澤村が隣に腰を下ろす。
「大丈夫か?スガに電話するべ。きっとすぐに……。」
立花はその言葉を拒否するように黙って首を横に振る。
「すぐ……良くなるから。ごめん…。」
声を出すのも苦しそうに立花は言って、
顔を膝につけて身を小さくする。
澤村は少し迷ったが、そっとその背中に手を伸ばす。
立花は一瞬ビクリと身をこわばらせたが、優しくなでると、徐々に呼吸が整っていくのが分かる。
しばらくして、静かに立花は声を出した。
「ごめんね。」
「いいって。少し落ち着いた?」
立花は顔を上げて小さく頷く。
その顔色が先ほどよりだいぶ良くなったので澤村は安心した。
立花は握っていたペットボトルを開けて、少し口をつける。
「ほんとにスガ呼ばなくていいか?」
「うん。平気。ごめん。」
「いや、俺はいいんだけどさ。
あいつ後でこのこと知ったら……。」
「言わないで。」
「でも。」
「おねがい。もう、こうちゃんから離れないと……私も苦しい。」
そう呟く立花の声は震えていた。
「立花?」
立花はふうと一度息を吐くと、にこりと笑顔を作って澤村に向かう。
「ごめん。なんでもない。もう大丈夫だから。
私もう少し休んだら帰るね。
だから澤村君もみんなのとこに……。」
「立花ごめん!」
澤村は立花の声をさえぎって彼女に頭を下げた。