【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第3章 秋祭り
それからみんなでお祭りを見て回った。
人はどんどん増えているようで、
油断すると目印の月島の頭も見失うほどだ。
「あれ、スガがいない?はぐれちゃったかな。」
澤村が、菅原の姿が見えないことに気付いて声を上げた。
「あ、清水先輩もいません。」
谷地が辺りを見回して言う。
「マジかよ。まさかの二人が迷子になるなんてな。
まあ仕方ないか。見つけ次第捕獲で。」
澤村の言葉に、みんなが軽く返事する。
立花も二人のことが気がかりで、探しながら歩く。
(あ、ちょっとやばいかも……。)
人ごみでキョロキョロしながら動いたせいか、頭がクラクラする。
涼しくて少し肌寒いくらいなのに冷や汗が滲む。
それでも、みんなとはぐれないように必死でついていく。
(苦しい……気持ち悪い……。どうしよう。)
膝に手をついて、浅い呼吸を整える。
(みんな歩くの早い……こうちゃん、どこ。)
心の中でもう一度その名を呼ぶと、じわりと涙が滲んだ。
「立花、大丈夫か。」
頭上から声が降ってきて、立花は顔を上げる。
「澤村君……。」
「ちょっと疲れたか。」
「人ごみに、酔った……ごめん。先行って。
ちょっと休んでく……。」
立花は苦しそうに声を絞り出す。
「て言っても、俺らもはぐれたな。みんないない。」
「え、うそ。」
「ちょっとごめんな。」
澤村はそう一言断ってから、
立花の腰に手を回して身体を支える。
「境内の方がここより人が少ないはずだから、そこで休むべ。」
ゆっくり歩き出す。
立花がふと顔を上げると、
人垣の向こうで菅原と清水の二人が並んで歩いているのが見えた。
「あ。」
「どうした?」
立花の視線の先を澤村が追うが、
二人はまた人の波に呑まれて姿を消す。
「なんでもない……。ごめん。」
「あと少しだから、がんばれ。」
立花は頷いて、澤村の力強い腕にその身を任せて顔を埋めた。