第3章 首無魔騎士の部屋
「ネコ…」
息を切らせて彼女は騎士の名を呼んだ。
もう店が終い始める頃、首無魔騎士の主はやって来た。
元よりそういう予約ではあったが騎士にしてみれば一日千秋、冬も明けんばかりの切ない時間であった。
会えないのすら寂しいのに、逢瀬が決まれば決まったで会いたくて堪らなくて胸が張り裂けんばかりになるのだ。
「主さん、ごゆっくりでさぁ」
部屋で待っていたネコに主を引き渡しアッサリと一言残し従者は去っていく。
「主、…早くお会いしたかった…」
うやうやしく、立っている主を椅子に導き座らせてネコ。
銀の水差しから飲み水をコップに注ぎ騎士が差し出せば、彼女は喉を鳴らして飲み干す。