第2章 屍鬼の部屋
「ねぇ、傷口、少し舐めさせて」
二人で、入った褥で彼女に云われ、少年は止血用のテーピングを解いて見せた。
そこに主は唇を這わせじくじくと滴る腐液を啜る。
欠けた腕は時間をかければ自然治癒するが、それでは仕事に差し障りがある為、普段は朝、千切れて食べられた部分にユリシスのものをついで縫合してくっつける。
「主さん…好きさ、」
又来てほしい――。
その言葉が出てこないのは、この無心に体液を嚥下する女性に心酔しているからだ。
直接的な言葉で、答えを聞きたくないから。
「主さん♡」
頭を撫でれば、子供のように口の周りを少年の体液でベタベタにした笑顔が向けられる。
――幸せだからこれでいいか。
「あんまり飲むと腹ァ下すぜ?」
無邪気な主に自然と笑みがこぼれる。
今夜はまだ始まったばかりだ。