第12章 懐かし語【吸血鬼主従】
夜も更け日付を越してから二刻を過ぎた頃、店は眠りにつく。
店の前に出していた提燈をルチアが肩掛けを引き寄せながら仕舞に来る。
一一それが消えたら店は閉店。
朝まで店は宵闇に沈む。
カチャ。
戸を内側から施錠してふぅ、と従者は息を付く。
夕方から本番、朝を迎える営業が終わるとやはり何だか安堵する。
何も問題を残さず終わったなら尚更だ。
鍵を穴から抜き踵を返す一一と、
「ルチア、」
主人の言葉を最後まで聞かずロビーの奥に小さく作られたバーカウンターへ向かう。
中へ入りミルクパンを出してその中に牛乳と竜肝酒を注ぐ。
火にかけふつふつしだしたら膜が張らないように木べらで優しくかき混ぜる。
淡いピンクの液体が煮立ったらそれをティーカップに濾しながら注ぐ。
最後にソーサーに角砂糖を乗せティースプーンはカップに刺して主人の特等席、窓際のテーブルへ運ぶ。