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私立薊河学園

第5章 合宿開始


「あー、遅かったね」

「お前らどんだけ過酷な掃除してんだ」


後から来た部員達に長谷川が声をかけたが鋭いツッコミが入る。

先に掃除をしていた男二人が黒ススまみれの顔で出迎えてきたからだ。


「てか敬語な。俺三年お前一年Are you OK?」

「Yes, I am!」


ため口だった長谷川に軽く注意をしたのは三年のリチャード・ルイ。イギリス人とフランス人のハーフでサラサラの金髪ととびぬけて整った顔が目立っている。


「てゆぅかぁ、長谷川は掃除当番じゃねぇだろぉ?なぁに一年にやらせてんだ奈木ぃ。」

「えー、俺のせい?蒼井田もやる?」

「やるかよなんでそぉなるんだ」


三年の蒼井田利由羽(あおいだりゆう)はズカズカと大股で合宿所へ入っていく。

合宿が嫌なのか死んだ魚のような目をしているのがわかり、長谷川が思わず笑うと思い切りしばかれた。


「奈木、長谷川。お疲れ。これで顔ふけ。」


突然、二人にタオルが差し出された。


「ふふ、ありがと。」

「あざーっす!」


チャラけた返事をしてまたしばかれた。次に長谷川をしばいたのは三年のマネージャー、花宮真美(はなみやまみ)だ。


「お前ら一年いじめすぎな。あと掃除してくれてるんだから礼の一つでも言っとけ」

「キャプテン…!」

「例え心の中でくそ野郎と思ってでもな」

「そんなお礼ノーサンキューだよ!」


思わずキャプテンの八乙女美音(やおとめみおと)のとんでも発言にまたため口でしゃべってしまい、とうとう温厚なリチャードにまでしばかれてしまった。


「皆、ひどい…!」

「ドンマイ長谷川。さて、そろそろ終わりにしようか。花宮、タオルありがと。」


長谷川は奈木に続いてイソイソと合宿所へ入っていく。


「ブッ!カルガモの親子かお前ら!……って奈木ぃ、朝一でヘッドロックは……ぁ…

ギャアアアアアアア!!」


中から聞こえてきた蒼井田の叫びに誰も手をさしのべようとはしなかった。

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