第19章 ハートの海賊団にて・その2
「ありがとうベポくん!」
白く、ふわふわの毛皮に顔を埋めるイリス
間にローを入れてでは無く、直に抱きしめたかった
それに、きっと自分の顔は真っ赤だろう
(恥ずかしい………こんな顔見せられない………)
ローから隠すように顔をベポに押しつけた
「イリスさん!?」
突然の事に驚くベポ
ローに視線をやると穏やかな顔をしていた
(あれ?そんなに怒ってない?)
ぎゅっとイリスを抱きしめてもそれは変わらない
嬉しくなってイリスと二人、いつまでも抱きしめあっていた
薬品庫からベポの楽しそうな声が聞こえる
(扉開けっ放しのままで、何やってんだ?アイツ………)
ベポを捜して船内を走り回っていたシャチはやっと見つけたと、その部屋に急ぐ
きっと船長を捜してる途中で薬品庫の素材に興味が移って遊んでんだろう
間に合った~と、胸を撫で下ろしながら部屋へと入る
「お~いベ~ポ~!さっき言ったことは取り消しな~船長の邪魔すんなよ~」
部屋の真ん中でキャッキャとはしゃぐベポには小さな女の子がくっついていた
いや、ベポの巨体からみれば女の子は誰でも小さく見えるもんだ………
その光景を見て
(あぁ~イリスさんと仲直り出来たんだな……)
良かったな~なんて思っていたら
物影の暗がりからゆらりと船長が現れた
「良かったな~シャチ、二人はめでたく仲直りしたみたいだ…………」
ニヤリと黒い微笑みを向けられ固まるシャチ
「いきなりベポが入ってきて驚いたもんだが……さっき言ったのはどう言う意味だ…?」
不機嫌手前くらいの意地悪な感じの船長
(知ってる、コレ絶対知ってるよ!)
船長からは全部知ってます的なオーラが漂っていた
実際ローはベポから全部聞いていた
シャチに言われて自分を捜していたことを
冷や汗が止まらないシャチ
「船……長……、オレそんなつもりじゃ…」
「ここじゃ困るだろ?あいつ等から離れとこうぜ?」
シャチの肩を掴み、無理やり薬品庫から連れ出す
どこがいいんだ?なんて聞いてくるが全く頭に入らない
部屋の中には仲良くたわむれる白熊と女の子
これから当分この二人には会えないだろう
自分の未来を予感して泣きそうになるシャチだった