第18章 不器用な男達
~海軍本部・医務室~
「ベット空いてる~?」
のそっ、と入り口から顔を出したのは大将・青キジ
長身細身のモジャモジャ頭の、ゆるい態度の男である
頻繁に医務室に来てはベットで昼寝をし、探しに来た部下に叱られながら帰って行き、後から医務室に苦情が来る、“次からは追い返してくれ”と………
そんな日々が続いていたが、例のガープ騒動でベットの空きが無くなってからは、彼の医務室への足が遠退き、平和が続いていた
久々に現れた困った上官に、軍医も看護婦も緊張の面持ちで入り口に視線を送るが、
「あらら、違った……トムランザ君まだいる?」
聞こえた声に内心ほっとする一同
どうやらお見舞いに来たらしい
(えッ…?お見舞い?)
例の騒動で負傷した大半は、既に完治し通常業務に戻っていたが、重傷だったアギー・トムランザ他数名が、まだ医務室の住人として残っていた
彼の元には騒動直後から沢山の花や、激励の手紙が贈られて来ていた
“伝説の海兵”に挑んだ強者として称賛され、本人もまんざらでも無さそうだった
(青キジさんもそんな人達の一人なの?)
(大将が、ただの一兵卒を見舞う?)
(あり得ない!)
不審な目で見られながら、目的の人物の所に向かう青キジ
道すがら、ちゃっかり空きベットをチェックし“近いうちに寝に来よう”なんて思っていたりした
「トムランザ君、調子はどう?」
いきなり現れた大将に驚愕するも、一瞬で我に返り、ベットから飛び起きようとするアギー・トムランザ
しかし、気持ちとは裏腹に体がついて来なかったようで痛みに悶絶し、ベットに倒れ込む
「あららら………無理しちゃダメだよ~」
動くな、寝てろ、と言ってもなかなか言うことを聞かない彼は、意外にも上下関係をしっかり守る奴らしい
俺の元上官(ガープ)にも見習って欲しいものだ
それにしても、怪我人相手に無理はさせられない
(仕方ない………)
懐から取り出した一枚の紙切れ
“モンキー・D ・イリス ファンクラブ”の名刺をベットに横たわる彼に見せる
「君は会長、俺はただの会員、君の方が立場は上なんだよ~」
だから偉そうに寝てりゃいいの、と無理矢理納得させる
ようやく落ち着いた二人は、そのまま医務室で何時間もイリスと、ファンクラブ活動内容などについて語り合ったと言う