第16章 空の上 海の中
医務室からにしては遠すぎるその声に、何があったのかと二人は駆け出す
声の発信源には、やはりイリスがいて壁を背にしてしゃがみこんでいた
イリスの叫び声で、何人かの仲間が集まって来て、ざわざわと遠巻きにこちらを見ている
軽く舌打ちするロー
放心状態のイリスに向き直る
ここは医務室から随分離れている
船内を勝手に動き回るな、とローが口を開こうとしたその時、
「なっっ何かいた!窓の外!」
ローに気づいたイリスは、壁にある丸い窓を指差している
しかし、外は真っ暗で何も見えない
「ゆらっとした影が見えて、そしたら次にギョロッとした金色の何かと目が合って………で、またゆらっとしたかんじで…泡みたいなのを吐いて………金色のギョロッとした………」
次々と見たことを話し出すイリスだが、混乱しているのか同じことを何度も話している
あたふたしている彼女はとても可愛らしい
「おい、落ち着け。デカイ魚か、海王類じゃねぇのか?この辺の海に凶暴なのはいねぇから安心しろ」
窓から外を確認しつつ、ローは心配ないと言った
「??」
意味が分からないイリスは、ローが見ている窓の外を凝視するが………やっぱり真っ暗なままだった
が………突然、丸窓いっぱいの金の瞳が現れ、バチッとまばたきをして船内いにる人間を見た
「ヒッ………オバケ~~!」
思わず近くにいたシャチに抱きついた
座り込んだイリスに手を差し伸べようといつの間にか近づいて来ていたのだ
しかし、あまりの勢いで倒れるシャチ
仰向けのシャチの上にイリスが乗っかる
(えっ?何コレ?天国?)
イリスは、思いっきり抱きついている為、腕やら、足やら、"胸"とかの感触が服越しにもリアルに伝わる
(あぁ~しあわ…せ……ッ!?)
自分の胸にしがみつくイリスにデレッとしながら至福を味わっていたシャチだが、その視界がフッと暗くなる
シャチは無表情(怒り顔?)で、覗きこむ船長とバッチリと目があったのだ