第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
櫻井side
朝、登校してたら
恒例化するように女の子が立ってた。
「おはよう、そこ、邪魔…なんだけど」
ローファーを手に持って、
そう言うと女の子は横にズレる。
何か用なら言えばいいのに
「…っ、あの!」
意を決したように、
女の子が叫んだ
びっくりして動きを止めると、
「…あの、王…寮に住んでる
女の子はだれ、なんですか。」
「だれって。寮母さんだけど」
俺らが住む寮に、
新しい寮母が来たと言うのは
そこまで知れ渡ってる事じゃないらしい
現にこれまで
女の子数名に聞かれた。
「ねえ、遅刻しちゃうから
用件はやく言ってもらってもいいかな」
「っあ、なんっ…でも、ないです…」
そう言って友達らしき女の子と
パタパタと走り去って行った
なんなんだ、ほんとに。
はぁ、とため息をついて
ローファーを靴箱に入れて
行こうとすると
「なーんか嫌な予感すんねん」
と、亮が壁にもたれ掛かって立ってた
「嫌な予感…、ってなに」
「ほら、前にもあったやろ。
それと同じ感じ、気ぃつけとかな」
行くで〜と、
さっさと歩き出した亮
前と同じ感じ、か
不安がよぎる