第4章 Episodes.錦戸:女好きにも理由がある
苦しくて、逃げたくて、
つらくて壊れそうな心の中に
それでも守らなきゃいけないって
変な使命感があった
助けてなんて言えるはずがない
こんな汚い俺を、
誰が助けるというんだ。
コンコン、
ノックされ扉が開く。
入って来たのは寮母さん
心配そうな顔して、
俺の方へ少し歩み寄った。
「だい…、」
「なんで助けてくれたんや」
伸びた手が止まる。
え、とか細い声が返ってくる。
暗い部屋の中なのに
はっきりと寮母さんの顔が見える。
「あんたやろ、助け呼んだの
別にええのに。俺なんかほっとけば」
「翔さんがパニックになってました
それに誰か1人いなくなってしまって
そのうえストーカー被害あっていたなんて
ほっとけるなんてことは出来ません」
「そんなの、ただの同情やんか
俺の為なんかやないやん」
その気持ちの中に、俺への、
強い想いなんかない
助けたいなんて嘘ばっか
自分が安心して満足したいだけ
「助ける事に理由なんかいらないでしょう
自分をその状況に置いてみて考えれば
安易に考えつくことでしょう」
「じゃあ、あのとき、
俺が何度も助けて欲しいって言ったとき
なんで誰も助けてくれへんかったんや!!!」
見て見ぬ振りされた
助けて欲しいって、
叫んだのに耳を塞がれて。
手を払いのけられて
俺のため?
嘘やん。
だったらなんであのとき、
泣いてる俺を置いてけぼりにして
手を差し伸べてくれへんかったんや