第8章 Episodes.泉森:愛と温もりと憎悪
人は人を簡単に切り捨てるものだから。
だから信じなきゃいい、
信じなきゃ傷つかなくて済むし
捨てられたりしないで済むんだから。
苦しくて辛い現実を、
私は頑丈な鎖で開かないように。
開かれないよう閉めた。
丸まって耳を塞いで泣いた。
それでもその扉を、
何度も叩いて呼んだのはヤスくんだけ
ねーさん、ねーさんと、
決して名前を呼んだりはしないけど
彼は私を見放さなかった。
見放さないで、いてくれたのに。
私はまたそれを、拒絶した。
「イズミ、ただいま。
好きな物たくさん買ってきたよ」
待っててね、とキッチンに立つ彼。
嬉しそうに鼻歌を歌っている。
「……どうして、私、なの」
「…え?なに?」
「…どうして私なんですか」
可愛い子なんかいっぱい居る。
貴方はカッコいい人だと、思う
だから女の子は寄ってくると思う。
素直な人とか、いたのに
「…イズミは僕とよく似ているからね」