第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
「私はお兄ちゃんが羨ましかった
確かに私は2人に甘やかされてたし、
何してもワガママ言っても許されてた
でもね、2人の頭の中、話題のネタは
いつもいつもお兄ちゃんだったの」
「…お、れ?」
「受験も落ちて勉強だって平均的な私は
今以上を期待なんてされなかった
お兄ちゃんの行く道の邪魔になるような事
だけは絶対にするなって、言われてた」
涙ぐむ萌乃さんは
ゆっくり俯いた
本当は陰で悩んでて、
悔しくてそれを櫻井さんに
ぶつけてた、ってそういうこと?
「レンだけは私の居場所だった
だから何でも叶えてあげたかったの
女遊び酷くて浮気されて怒ったことあった
でも、私だって、欲しかった…」
居場所と言える人が。
櫻井さんがここの学校に入学して
寮に入って楽しそうにしてる姿を見て
きっと羨ましかった
家に居てもピリピリイライラしてる
両親を見ては息苦しくなって
だから機嫌を伺って、
いつも櫻井さんがしていた事を
自然と萌乃さんがするようになってしまってた
「本当は知ってた。セリナさんが
酷い人だってこと、でも言えなかった
ごめんなさい…。」
泣きながら謝った萌乃さんを
櫻井さんは優しく撫でた。
「傷つけたのは俺も同じだ
それに関しては俺も謝らなきゃいけない
萌乃だけが悪いことはない」
「許して、くれるの…?」
「俺の妹だろ。家族を許さないなんて
人生1番つらい選択はしないよ」