第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
同姓同名と思いたかった。
絶縁していたのだ。
会いに来るはずない
『やたら翔の事知ってるからさ
最初は身内かなんかと思ってんけど…
苗字ちゃうし。もしかして幼馴染み?』
そう聞かれ、
ドキドキと変に鼓動が早くやる
『し、知らない…けど』
でも誤魔化せなくて、
泳がせていた視線を
亮の視線と合わせると
見抜かれていたように
困ったように眉毛を八の字にしていた
『気ぃつけとけよ。
そいつ本気でお前捜しとるから
ここの子やないからアレやけど』
『うん…』
心配なんてもんじゃない
なんで今になって
捜し出すんだ
別に理由なんてないだろう
『んな不安そうな顔すなよ!
俺が、俺は翔だけは守ったるから。』
な、と肩を軽く叩かれ
亮はポケットに
両手突っ込んでどこかへ行ってしまった。
きっと、気のせいだ。
ニノだって大倉だっているんだ
なにも、ないよね
そう、安心したかったんだと思う
俺はセリナの話をすっかり忘れ、
学校敷地外にある、
公共施設の図書館に行ってしまったんだ