第5章 Episodes櫻井:優しさの裏と表
「…ちゃん、何やってるの」
「あんた誰。退きなさいよ」
萌乃は鋭い目つきで
ちゃんを睨んだ
あからさまな敵意だ
「…っ。」
びく、と震えるちゃん
「…ちゃん?」
「まだ!」
震えるちゃんは、
決して動こうとはしない
「…まだ櫻井さんとお話してないです
生徒会長さんに懇願されました
助けて欲しいんだって。自分じゃ、
櫻井さんを助けてあげられないから。
だから!櫻井さんを助けます!!!」
きっと怖いだろうに、
ちゃんは逃げようとはしない。
「大丈夫だよ、慣れてるし…」
「ダメですよ!!」
振り向いたちゃんが
涙をこらえながら、
俺の腕をつかんだ。
「そんな事に慣れてはいけません
本当は寂しいくせに。独りぼっちなんて
慣れないくせに。ダメです
助けて欲しいなら叫ばないと」
まるで、自分に
言ってるみたいで
心のどこか、
ぎゅ、と痛んだ。
「助けてって、言ったことで
誰かが傷つくのはもう沢山だ
傷つくのは俺だけで、もういい
例え笑えなくなったっていい」
「笑えないのは、悲しいですよ?」