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それはまるで、魔法のようで =食戟のソーマ=

第16章 ひと皿の記憶and敗北の苦み



堂島
「本当は気づいているんだろう?勲章を獲った今、次にどこへ向かえばいいか分からなくなっている事。そのせいで始めは支えになっていた柊の存在が今では足枷となっている事に。頂に立ち尽くしたままで一歩も前進できていない、それは料理人にとって退化と同じ。この勝負でスペシャリテを出さなかったのは、自分の料理が停滞している事を俺たちに知られたくなかったからだろう?」

四宮
「だまれっ!!アンタに何がわかるっ!遠月のグループの雇われシェフやってるあんたなんかにこの俺の何がっ・・・!!」


荒ぶる四宮の言葉を遮り、堂島は田所の料理の乗った皿を差し出した。


堂島
「食ってみろ。田所くんの料理・・・。」

四宮
「フン・・・なんでそんな事・・・」

そう言いながらも無言の堂島の圧に負けテリーヌを口に運ぶ四宮

四宮
「ハ・・・火入れがあめぇ。盛り付けも、パテのつなぎもなってねぇ。堂島さんもヤキが回ったな・・・」
(なのに・・・なぜ、なぜこんなにも心に染みるのか。拙さはある。だが工夫の一つ一つに食べる側への気配りが込められていて・・・張りつめた心を解いていくような・・・この味は・・・まるで・・・母の味!!)

四宮は今までの自分の言動、聞いてしまった雪乃の秘密、そのすべてに想いが寄せられ、手にしていたコインを田所の皿の上に落とした。


堂島
「どうやら気づいたようだな。"すべて"に。」

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