第16章 ひと皿の記憶and敗北の苦み
俺は行き場のない雪乃を自分に重ねたんだろう。
目的地のないこいつを助けてやりたくて、自分の店を1か月ぐらい開け、雪乃との生活を始めた。
もともとそんなに資金を持ってきていなかった俺は勲章を獲る前に一度北海道に来たことを思い出した。
四宮
(確か、北海道に支店を開こうとして土地を買ったような・・・。)
俺は買ったはいいものの放置していた土地を思い出し、それを売ることにした。
その土地を買い取ったのはなんと堂島さんだった。
この時本人に会うことはなかったから経緯は知らないが、前々から狙っていたそうだ。
そして資金を手に入れた俺は雪乃の素性を探しまくった。
それによってこいつが今までどんな扱いをされてきたのか
を知り、俺はどんどん雪乃にはまっていった。
気づいた時にはだいぶ年下のこいつに惚れていたんだ。
名前を与え、料理を教え、才能があったし、低体温だったから氷細工も教えた。
雪乃のすべてを俺で染めた。
気分がよかったのは、それを雪乃がすべて受け入れ、感謝までしてくれたからだろう。
自分でも呆れた。
呆れたけど、想いが収まることはなかった。
でも自分には店がある。
だから・・・
四宮
「雪乃、オマエが16歳になったら迎えに来る。」
俺なりのプロポーズだった。
次の日の電話で伝わっていないのが分かったが・・・。
それでもよかった。
心の支えができた。
が、フランスに戻った俺はまた行き先を見失ったんだ。
=回想終了=