第16章 ひと皿の記憶and敗北の苦み
店を開けたことで舞いあがっていたのかもしれない。
始めは小さな歪みだった。
本場のシェフによるよそ者への差別意識
若すぎる俺への反発、嫉妬
それは次々と大きな裂け目を作りだし・・・
店の経営は傾いていった。
俺はいろいろな複雑な感情や視線に追い込まれ、壊れた。
信じられるのは自分だけ、スタッフすら敵と考えろ。
その言葉を自分に言い聞かせて、
張りつめて、張りつめて、張りつめ通して・・・
俺は"レギュムの魔術師"と呼ばれるまでになり、
ついには憧れのプルスポール勲章を手に入れた。
それからの俺の人生は詰まらいものだった。
何もかもが色あせて見える、それが嫌になって仕入れとして一度日本に帰った。
が、その時の俺は堂島さんやヒナコに会いたくなかったから、絶対に遭遇しないであろう北海道へと飛んだ。
そして出会ったのが雪乃だった。