第15章 その面影
黒木場
「・・・なんか眠くなった。」
大あくびをした黒木場は自分の部屋に戻ろうとする。
が、それは伊武崎によって阻止される。
伊武崎
「おい、待てよ。」
黒木場
「・・・何?」
理由はただ一つ。
伊武崎
「自分の部屋に戻るのはいい。むしろさっさといなくなれ。でも・・・そいつは置いていけ!!」
黒木場はちゃっかり雪乃魚を担いでいたからだ。
黒木場
「・・・・・抱き枕。」
伊武崎
「お前が言うと意味かわんだよ!!」
アリス
「バイバイ、リョウ君また明日!」
吉野
「いいの!?」
榊
(私も眠いし帰ろうかなぁ・・・)
伊武崎
「おい!雪乃もなにか言えって・・・」
そう言って雪乃の顔を覗き込んだ伊武崎は大きくため息をついた。
伊武崎
「この状況でよく寝れるな・・・。」
アリス
「あら、疲れたのね。」
伊武崎
「お前らのおかげでな。ま、ちょうどいい。ほら、返せ。」
黒木場はあからさまに嫌そうな顔をする。
吉野
「我ら極星勢!どんなときでも共に歩く!雪乃もその一員なの!絶対返してもらわなきゃ困るの!!」
いまだ離そうとしない黒木場に伊武崎は呆れたように言った。
伊武崎
「あのな、こいつは寝てる時に一番恐怖を感じるんだよ。目が覚めて近くに誰かがいたら、絶対に恐怖と自己嫌悪に襲われる。俺はそんなのは見たくないんだ。だからこいつの部屋に静かに運んでやらないか?」
その言葉に黒木場は一度雪乃の寝顔をみて、軽くため息をついた後、あきらめたように伊武崎に雪乃を渡した。
黒木場
「・・・お前は俺の知らない雪乃を知ってるみたいに聞こえた。」
伊武崎は一度キョトンとして、ニッと笑った。
伊武崎
「まぁな。なんせ極星勢ですから?」
黒木場はそれを鼻で笑い、部屋を後にしたのだった。