第13章 存在の証明
そして自由になったのをいいことに好き放題する乾
乾
「頑張って私の恵ちゃーん!!」
四宮
「うるせぇ!!」
が、焦る田所にその言葉は届いていないようだった。
水原
「そういえば、四宮。今日の午前の課題、私のとこに柊が来たんだけど。予定ではアンタのとこだったよね?何かの手違い?」
その問いに黙り込む四宮
水原
「いや、まぁ美味しかったからいいんだけどさ。」
すると四宮は少し嬉しそうな、得意げな顔で言った。
四宮
「あいつちゃんと料理してんのか・・・はっ、俺の一番弟子だ。美味しくて当然だな!」
水原
「なんでお前が得意げになってんだよ、気持ち悪い。」
四宮
「っんな!ってかどんな料理だった?」
水原
「トマトのゼリー。中のゼリーは透明感があって柔らかく、それでいてトマトの味がしっかりとしていた。トマトそのものを凍らせて器にしてしまうのには驚いたよ。トマトは形が崩れやすいから、ある程度の技術がないと形を維持できない。」
四宮
「へぇ・・・他には?」
水原
「他?それだけだよ。お題がデザートだったからね。」
その言葉に四宮は表情を曇らせた。
四宮
(お題はデザートだと?雪乃の得意分野で"それだけ"?)
「・・・氷のものとか、なかったのか?」
水原
「氷?調理には使っていたみたいだけど、料理には特に。」
四宮
(あぁ、そうか・・・・お前は・・・・)
雪乃が本気で料理をしていないことをしり、気持ちに靄がかかる四宮
四宮
(・・・っでも、俺が言えることじゃない・・・俺は・・・)
四宮は昨日の夜に聞いてしまった事を思い出し、悔しさや悲しさがあふれ出たようだった。