第10章 過去の秘密
とうとう5日続けて帰ってこなくなった日、僕は家出をした。
僕がいなくなれば帰ってくる、そんな気がしてたんだ。
が、お兄ちゃんは僕の思いを大きく裏切る。
お兄ちゃんは家出した僕を一生懸命探し、見つけ、怒った。
「雪乃!お願いだから、俺の前から消えるな。」
そう言って僕を抱きしめたお兄ちゃんは泣いていた。
その時も僕は泣かなかった。
一緒に帰って、お兄ちゃんは僕にご飯を作ってくれた。
でもそれはいつものフレンチとは全然違っていて、なんというか、和食だった。
そのお兄ちゃんによる和食御膳は思ったよりもおいしくて、最後に出された水ようかん。
これを食べた僕はなぜだか泣いてしまっていた。
今まで何があっても泣かなかった、泣けなかったのに・・・
正直、いつものフレンチの方が何倍も味は良かった。
が、僕はその水ようかんによって心の氷が解け、感情というものを取り戻したんだ。