第10章 過去の秘密
あの時のお兄ちゃんの驚いた顔は今でも忘れない。
僕に本名がないとわかったお兄ちゃんは数日後めんどくさそうに僕に名前を付けたんだ。
「柊雪乃、これでいいいだろ。」
あとあと由来を聞いたが、なんと苗字はお兄ちゃんの初恋の相手の名字で、下の名前は昔飼ってた犬の名前だといった!
でも僕はそれが嘘だとわかっていた。
なぜならお兄ちゃんの机の上にはたくさんの料理の本に埋もれた"命名法"と書かれた占い本のような厚い冊子があったから。
それには付箋がたくさんしてあって、考えてくれていたことがよく伝わった。
一緒に暮らして約1年たった頃にお兄ちゃんは2、3日続けて帰ってこない日が増えていった。
僕はお兄ちゃんにも捨てられるのか、となぜか落ち付いた気持でいた。
今まで一緒にいたのがおかしかったんだ。
いなくなるのがあたりまえなんだ。
僕は自分に言い聞かせた。