第10章 過去の秘密
=雪乃の語り=
最初はお兄ちゃんも知っていることなんだが、
あ、お兄ちゃんとは四宮シェフのことだ。
僕が"10歳まで"信じていた話をしよう。
僕は北海道のどこかで生まれた。
詳しい場所はわからない。
なぜなら僕は生後1年で実の親に捨てられてしまったから。
吹雪の中、僕は籠に入れられて泣きもせずに田舎の病院の前にいた。
病院の先生がそれを見つけ、保護してくれた。
その籠には親を見つける手がかりとなるものは一切なかった。
病院の人は冷え切った体の僕を一生懸命温めたそうだが、一向に体温が上がることはなく、逆に悪化したことから障害児であると判断したそうだ。
今でもここの病院には年に一度通っている。
僕の異常な体温には前例がなく、医学を学ぶ人にとっては貴重な研究対象らしい。
数年前にそこの先生が採血を嫌がる僕に言ったんだ。
「君は自分が未知にあふれた生命体だという自覚を持ったほうがいい。」と。
今までの優しかった先生とは全く違った表情に、当時の僕は恐怖を覚え、絶望した。
僕は実験動物でしかなかったのか、と。
あぁ、そうだ。話がそれたね。