第36章 スナックすまいる
しかしこの状況はマズすぎる
近藤さんはお妙さんしか見えてないので大丈夫だろうが
トシと総悟にバレるのは時間の問題だろう
こうなったら逃げるしかない
さっき覚悟を決めたとこだが背に腹は変えられない
『銀にぃ、こっそり逃げよ……うっ⁉︎』
いない⁉︎
さっきまで隣にいたのに⁉︎
さては俺がグルグル思考を巡らせている間に俺を置いて一人で逃げやがったな⁉︎
あんのクソアニキィィィィィィィ‼︎
「アンタ、ボーっと突っ立ってねぇで酌でもしてくだせィ」
総悟にうながされとりあえず総悟とトシの間に腰を下ろした
すっかり逃げるタイミングを見失ってしまった
なるべく顔を見られないように俯いたまま二人にお酌をする
すると、スッと総悟の手が伸びてきて俺の髪を耳にかける
そしてそのまま毛先まで指を滑らせそこにキスを落とした
「アンタ、綺麗な髪色してやすねィ」
俺はビックリして顔を上げてしまい、バッチリ総悟と目が合ってしまった
が気づいた様子はなくそのまま俺の頬にそっと手を添える
「綺麗な真紅の瞳でさぁ」
愛おしそうに俺の瞳を見つめる
ちょっとちょっとどうしちゃったんだよ総悟のやつ⁉︎
こんなキャラだっけ⁉︎違うよねっ⁉︎
いや、最近はこんなか…?
……てか誰にでもそういうことしてんのかよ…
俺の心を言い知れぬ黒い感情が蝕んでいく