第5章 真選組副長
それ以降、が刀をぬくことはなかったのだが
総悟と二人で山へ行ったある日の夕刻
ミツバが血相変えてやってきた
「近藤さん、十四郎さん‼︎総ちゃんたちがまだ帰って来ないんです‼︎」
「確か稽古のあと二人で山へ行くと言っていたようだが」
俺は何だか妙に胸騒ぎがして、勢いよく走り出した
「俺が探してくる‼︎」
「待てトシ‼︎俺も行く‼︎ミツバ殿は家で待機を‼︎」
山奥まで行くと小さな山小屋を見つけた
「総悟‼︎‼︎いるか⁉︎」
扉を勢いよく開けると目を疑う光景が飛び込んできた
何十人もの天人の群れの中を舞うの姿だった
「どうなってんだコリャ……⁉︎」
状況が飲み込めず、俺たちは扉の前に立ち尽くしていた
二本の刀を手に天人を斬る姿はまるで舞でも踊っているように見えた
その姿があまりに綺麗で見惚れていると
最後の一人を斬り終えたがゆっくりこちらに視線を向けた
返り血を浴び、殺気を帯びたその目にゾクリとした
「くん‼︎」
近藤さんの声で目に宿る殺気が消えた
我に返ったはその場に倒れこんだ
「おい⁉︎大丈夫か⁉︎」
倒れこんだを起こしてやると
『今度は…大切な…もの…守れたよ……』
この時初めて笑顔を見せた
あぁ、ちゃんと笑えんじゃねぇか
そのまま気を失ったとを守ろうとしてボロボロになって倒れていた総悟を背負い、ミツバの元へ急いだ
しかし、次の日目を覚ましたは自分が天人を一掃したことは覚えていなかったのだ
ただ、この日を境には少しずつ笑うようになった
笑い方だけは思い出したようだなーー