第49章 最終節:第十三訓
その時、入り口の方から男達の悲鳴と斬撃音が聞こえた
男も俺に振り上げた刀を一旦下ろし、入り口の方を見やる
生憎ここからでは取り囲んだ攘夷浪士達が壁となり様子を伺うことはできない
「何だぁ⁉︎何があった⁉︎」
「な、何者かがすごい速さで突っ込んで…ーぎゃぁああ‼︎」
「お、おいっ⁉︎どうした⁉︎」
斬撃と悲鳴はだんだんとこちらに近づいてくる
こちらに向かって一直線に道が出来るよう男達が悲鳴と共に次々に倒れていく
俺たちを囲う最後の壁を斬り伏せ現れたのは、銀髪に二刀流の俺の良く知る人だった
「お、お前は…白銀の蝶⁉︎どうしてそんなやつがここにっ…ーー⁉︎」
攘夷浪士の中じゃさんを知らぬものはいないのだろう
言うが早いかさんは一瞬で男の背後を取り、男の喉もとに刀を押し当てた
『おい、総悟を傷付けたのはテメェかぁ?』
普段のさんからは想像もできないような殺気を放っていた
「ち、違うっ‼︎俺じゃないっ‼︎その女がやったんだっ‼︎」
さんは男に刀を押し当てたまま、双葉に冷ややかな視線を浴びせる
双葉はビクッと肩を震わせた
さんは、そうかと短く呟くと双葉から視線を外し俯いた
が次の瞬間
さんは男の喉もとに押し当てていた刀を一気に振り切った
さんの綺麗な銀髪に返り血が降り注ぐ
『総悟を傷付ける奴は誰であろうと許さねぇ』
さんの真紅の瞳が狂気を帯びて光る