第42章 最終節:第六訓
隣に座り俯いたまま黙りを決め込むトシを不審に思い
『どうしたトシ?』
「……して……な…っ」
トシの声は呟くように小さなもので聞き取れなかった
『えっ?何ん…てっ⁉︎』
次の瞬間、俺はトシの腕の中にいた
トシは力強く俺を抱きしめ自分の胸に押し当てる
「無理して笑うな。泣きたきゃ泣きゃいいんだ。こうしてれば見えねぇから。だから、無理に笑顔なんて作らなくていい」
トシ……
触れている所からトシの体温と優しさが伝わってくる
ありがとう…トシ…
トシの胸にそっと頭を預けた
「、総悟が好きなんだろ?」
俺は勢いよく顔を上げ、驚きの余り口をパクパクさせる
な、何故それを⁉︎
恥ずかしさで顔に熱がのぼっていく
「見てればわかる」
そ、そんなに分かりやすかったのか⁉︎
そういえば銀にぃも
〝自然と行動にでてるもんだぜ〟
とか言ってたっけ?
しかし当の本人が気付いたのはついさっきだよ⁉︎
自分の鈍さに呆れて涙が出るよ
『そっかぁ、バレてたかぁ。なんか恥ずかしいな。でももうお終い。さっき総悟の部屋の前で聞いちゃったんだ、双葉さんが総悟に告白するところ』
俺はトシの腕から体を離し、そのまま上半身を後ろに倒して腕を目の上にあてて涙が溢れるのを抑えた
「そ、それで総悟はなんて…っ?」
『〝もちろんでさぁ〟だって。そりゃそうだよね。あんな美人で性格も良くって断る理由なんてないよ。…それに、男に好きだなんて言われても気持ち悪いだけだろ?だからこれでお終い』