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科学班の恋【D.Gray-man】

第81章 そして誰もいなくなった





───ひヒ…ひひ、ヒ…






「っ!」

(こっちっ?)



再び耳が傾く。
右へ左へ。

周りの人々のざわめきに混じる、しかし確かな笑い声。
なのに出所が掴めない。
辿る声は、あちこちで零れ落ちるように生まれていた。



「南?どしたんさ。じっとしてねぇと危ねぇって」

「ラビ…なんか声がしない?変な笑い声みたいなもの」

「笑い声?…そんなものしねぇけど」



忙しなく辺りを伺う南を、怪訝な声でラビが呼びかける。
獣耳を左右に揺らしながら真剣に問う南に、ラビは眉を潜めた。



「空耳なんじゃね?」

「そんなことないよ。この耳なら音ははっきり聴こえるから。ねぇアレン、」

「…僕も何も聞こえませんけど…」



近くにいたアレンに問えば、これまたラビと同じに怪訝に返される。
この獣耳しか捉えられない音なのだろうか。

なんとなく胸がざわつく。
嫌な気配。

しかし嫌な予感を抱いているのは、南だけではなかった。



「出たさ…南のホラーあるある」

「確かに教団内なら付き合うって前に言いましたけど、今はやめましょうか南さん…悪趣味です」

「ええっ!?またそれ言う!?」



以前デンケ村の任務で何かと心霊現象に出くわした南を、遠巻きに気味悪がっていたラビとアレン。
その時の二人の姿が思い起こされる。
またふざけてるとでも言いたいのだろうか。
デンケ村でも結局心霊現象は本物であったのに。
余程二人にとって心霊系は鬼門なのだろう。



「いや、声は聴こえてるぞ。私にも」

「え。本当ですか?」

「まじかよ」

「マリ…!」



以前なら二人の冷たいあしらいに、突っ込むだけ突っ込んで諦めていた南。
だが今回は違った。
思わぬ救世主は、盲目のエクソシストであるノイズ・マリ。
盲目故に、彼の発達した聴覚は常人が聴き取れない音さえも拾うことができる。
つまりは南の現在特化している獣耳と、同じようなもの。

思いもかけない賛同者に、アレンとラビの顔は引き攣り、南は堪らず歓声を上げた。

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