第81章 そして誰もいなくなった
それは2年程前のこと。
「おい、南。早くしろって」
「う、ん…待って。これ地味に重い…っ」
「ったく頼りねぇな、細っこい腕してさァ。持ってやろうか?」
「…いい」
「なんでだよ」
「だってタップに借り作ったら、後で大量のお菓子要求されるもん」
「ははっバレてらー」
深夜の教団。
薄暗い通路をぞろぞろと歩くのは、科学班研究員一同。
その誰しもが大きな袋や段ボール箱を抱えて歩いていた。
タップに駄目出しされつつも、最後尾で懸命に大きな段ボール箱を両手で抱えて運んでいる南もまた、その一人。
「あっ!」
「お?今度はジョニーか」
ごちんっと何か硬い物が地面と衝突する音。
今度はなんだと目を向けたタップと南が見たのは、担いでいた大きな袋から小瓶を取り落としているジョニー。
ゴロゴロと勢い余って転がるそれが、最後尾の南の元へと向かう。
「南っ取ってそれ取って!」
「ええっ!私両手塞がってるんだけど…っ足で止めていいっ?」
「わー!それは駄目!中身が漏れたら大変だから!」
「落として割れてないなら大丈夫でしょ!?」
髑髏マークのラベルが貼られた小瓶の中身は、劇薬の類なのか。
ジョニーと南の顔が青いものへと変わる。
わたわたと二人が慌てる間に転がり続ける小瓶が、南の足にぶつかろうとした。
「ちょい待ち」
止めたのは、ひょこりと南の後ろから伸びた腕。
「あっ」
「え?」
「お?」
いとも容易く一つの手が、転がる小瓶をぱしりと掴む。
最後尾にいたのは南のはず。
慌てて追いかけてきたジョニーと、振り返った南と、目線で追ったタップがその人物に目を止めた。
「何してんさ?」
(((げっ!ラビ!?)))
興味津々に拾い上げた小瓶を見ながら、その場に佇む赤毛の青年に。