第17章 童謡あそび
「"かごめかごめ"?」
「そう。日本っていう島国の、子供の遊び。それに凄くよく似てる」
宿屋に戻ってラビ達と合流して、質素な朝食を頂きながら今朝の出来事を皆に話した。
真ん中に座った駒鳥役の人が、歌が終わると後ろにいる人物を当てる。
子供達に教えてもらった駒鳥回りという遊びは、前に資料で見た日本の遊びに酷く似ていた。
「マザーグースとか、かごめかごめとか…なんかこう、色んな国の要素が入ってるんだよね…」
外部のものを受け付けようとしないのに、何処から情報が入ってくるのか。
祈りを捧げてお祝いするというところも、キリストのそれに似ているし。
そう考えながら、乾いたパンを小さく千切って口に運ぶ。
ぐきゅるるる~
いざ食べようとすれば、その切ない音は大きくその場に響き渡った。
「お腹減った…」
「昨日の夜から、ずっとその音鳴ってんだけど。煩くて寝付けなかったさ」
「だって…止まらないんですもん…」
耳を塞いで言うラビに、お腹を抑えたアレンが力なく机に突っ伏す。
目の前の質素な食事が置いてあった皿は既に空っぽ。
村長が豊かな村ではないと言っていたけれど、それは本当だった。
食糧も乏しく、頂いてるこっちが申し訳なく思うくらい。
「…私の食べる?」
「いいんですかっ」
食べようとしていたパンを皿に戻してアレンに言えば、がばっと勢いよく顔を上げられた。
うん、大食漢なアレンには少な過ぎるよね。
盛大に腹の音をずっと聞かされるくらいなら、パンの一つや二つどうってことない。
「ありがとうございます!もぐっ…ごくん。ご馳走様です」
「早っ」
お礼と共に、一口で完食。
そんな見事な食べっぷりを見ながら、なんとなく子供達の笑顔を思い出していた。
お祈りの日は、ご馳走が食べられる。
そう嬉しそうに言ってた。
こんなに毎日貧相な食事なら、それが待ち遠しくもなるだろう。
だからああして歌遊びにして、口遊んでたんだ。
「その歌に何か気になることが?」
「…いえ、なんとなくです」
問い掛けてくるトマさんに、笑顔で首を横に振る。
屋敷での子供の囁き声のことは言わなかった。
背筋が寒くなることは、黒い影だけで充分だったから。