第17章 童謡あそび
「…ラナ」
思わず輪になって遊ぶ子供達を凝視する。
真ん中で蹲っていた男の子が、両目を隠したままぽつりと誰かの名前を口にした。
「わぁい、あたりーっ」
「クロルくん、また当てたね」
きゃあきゃあと声を弾ませる子供達。
どうやら後ろにいる子供を当てる遊びらしい。
じっと様子を伺った後、意を決して子供達に歩み寄ってみた。
「はじめまして」
声をかければ、きょとんと幼い目が幾つも私に向けられる。
「…はじめましてー」
「おねーさん、昨日きてた旅人さん?」
そして興味深そうに応えてくれた。
「そうだよ。この村のことが知りたくて。その遊び、なんて言う遊びなの?」
「…駒鳥回り」
「こまどりまわり?」
教えてくれたのは、クロルと呼ばれていた男の子。
少し暗く見える顔を上げて、ぽつりと呟く声はか細い。
「おねーさん、クロルくんの声きこえるの?」
「クロルって、いっつも声小さいから。ぼくたちとしか、お話しないんだよー」
確かに耳を澄まさないと、聞こえないくらい小さな声だった。
でもちゃんと傍で向き合えば聞こえる声。
「聞こえるよ。大丈夫」
だからにっこり笑って、クロル君の頭を撫でた。
優しく撫でれば暗く映る大きな目が、じぃっと私を見上げてくる。
こうして見ると、周りの子供に比べて少し覇気のない暗い顔をしてるけど…でも愛嬌ある可愛い顔してる。
やっぱり子供は可愛いなぁ。
すると他の子供達は、クロル君と私がお話したのが嬉しかったのか。
顔を綻ばせて口々に教えてくれた。
「こまどり回りのお歌はね、お祈りの歌なの」
「お祈り?」
「うん。村の皆でお祈りするの。お祈りが届けば、ご馳走が食べられるんだよ」
「そうなんだ…」
クリスマスソングみたいなものかな?
ご馳走を食べて、祈りを捧げて。
宗教的な村だってラビが言ってたけど、やっぱりそういう思想が根付いているんだ。