第17章 童謡あそび
朝。
一晩明かした宿屋から出て、新鮮な空気を吸う。
昨日は私達の訪問に物珍しげに家に隠れていた村の人達も、畑を耕したり、家畜の世話をしたり。
ちらほらとその姿を見せていた。
「あっちで遊ぼーっ」
「待ってよぅ」
目の前を楽しげに駆けていく子供達。
こうして見れば、他の村となんら変わりない。
のどかな普通の村だと思う。
"人の影が見えたんさ。…南の隣に"
昨日ラビに半ば強引にあの屋敷から連れ出されて、言い難そうにそう告げられた。
幽霊の類は苦手なラビだから、そんな冗談言う訳ない。
それが事実だと知ると、流石に背中に寒いものが走った。
でも私は何も見なかった。
「………」
何も見えなかった。
だけど。
「だぁれがこーまどぉり、ころしーたのー♪」
耳に届く、弾む子供特有の歌声。
思わず体が竦む。
見えなかったけれど。
でも、聞こえた気がした。
"あなたは だぁれ"
子供の、囁き声のようなものが。
「それはわたしーとぉ、すずめーがいったー♪」
一人の子を取り囲んで、手を繋いで輪になった子供達が歌う。
取り囲まれて真ん中にいる子は、両手で目元を塞いでじっとしてる。
そんな子供達の遊ぶ無邪気な姿に、思考が引き戻される。
竦ませていた体の力を抜いて、深呼吸一つ。
此処で一人、怖がっていても仕方ない。
「…もう起きたかな」
ほぅ、と息をついて肩の力を抜く。
子供の力って凄いなぁ。
そう感心しながら、アレン達を起こしに宿屋に戻ろうと背を向けて。
「あなたは、だぁれ♪」
聞こえた歌詞に、思わず足が止まった。
「…え?」
今、なんて。
思わず振り返る。
あの囁き声と同じ言葉に、思わずぞわりと背筋が凍った。