第2章 私の周りのひと。
「…癒されるのは、何も容姿だけじゃねぇし…」
「え?なんか言った?」
「うんにゃ、なんも」
笑顔でリナリーの良さを伝えれば、ぼそぼそとそっぽを向いてラビが何か呟いた。
声が小さくて聞き取れなかったけど。
「化粧とかするようになったら、益々可愛くなるんだろうねー」
「…そういや、南はいつも素っぴんだよなぁ」
「言わないで。わかってるけど、恥ずかしくなるから」
「化粧しないんさ?」
「しないっていうか、する暇がないっていうか…」
徹夜なんてザラな職場だから、化粧しても落とす暇がない。
それなら最初からしないに限る。
「でも休日に出掛ける日はしてるよ。偶にだけど…」
「えっ嘘っ。オレ見たことないさ!」
途端に、ガタリと机に両手をついてラビが身を乗り出してくる。
そ、そんなに驚くこと?
「見たい!スゲー見たい!」
「いや、そんな声を張られても…胸張って見せられるものでもないし…」
「オレが見たいんさっ。そうだ、南!今度の休みオレにくれねぇ?」
「…はい?」
「その日に合わせて、非番貰えるようにすっから!そんで、街に遊びに行こうぜ」
にぱっと未成年独特の無邪気な笑顔を見せられて、言葉が詰まる。
くそー…弱いんだよ、こういうの。
「偶には部屋でゴロゴロするより、外で遊んだ方がいいって!なっ♪」
「えー…でもそれじゃ仕事の疲れが取れないかも…」
「じゃあオレが、南が癒されるようなプラン考えるから」
お。
それは良いかもしれない。
ラビなら色んな穴場とか知ってそうだし。
「んー…それならいいよ」
「マジ?」
こくんと頷けば、途端にパッとラビの顔が輝いた。
そんなに喜んでくれるなら、プランなんかなくても付き合ってあげようと思った。
なんだかんだ可愛い後輩みたいな感じだし。
「じゃ、約束な!」
「でも非番合わせて貰えるかなぁ」
「そこはコムイになんとかしてもらうさ」
「なんとかって、どうやって」
「それは今から考える!」
軽く言うラビだけど、本当に非番合わせてなんてもらえるのかな…。
あの室長から。