第80章 再生の道へ
「…リーバー班長…寝てますか?最近…」
気付けば、ついそんなことを南は問いかけていた。
歪んだ彼女の表情に気付いたのだろう、リーバーは少しだけ罰が悪そうに笑った。
「寝れている…と言えば嘘になるな。まぁ確かに、いつもより少し忙しいが───」
「今日の仕事は?リナリーの説明が終わったなら、今日はもう上がりですか?」
「いや…少しだけ明日の準備をしてから、上がろうかと思ってる」
「………」
(…絶対、少しじゃない)
同じ科学班で仕事をしてきて、自分より遥かに仕事人間な姿を見ていたからこそわかる。
下手すれば残業ではなく徹夜でもするのではないか。
そう思えば思う程、不安は募る。
久々に顔を合わせた、会いたかった人は散々な顔をしていて。
なのに気遣うのは自分より他人のことばかり。
(怪我なんて時間が経てば治る。私は問題ない)
寧ろ入院していれば充分に睡眠も食事も取れるのだから、健康的な生活を送れていると言ってもいい。
それより問題なのはリーバーの方だ。
その額にはまだ怪我の治療の為、真っ白なガーゼが貼られているというのに。
そんな体に鞭を打って仕事をしているリーバーが、南は心配で堪らなかった。
「と、それより…悪いな、怪我人なのに立たせたまま話しちまって」
「大丈夫です、私は───」
すぐに病室に戻るから、と言いかけて、南ははたと口を閉じた。
(…そうだ)
頭に浮かんだのは、一つの案。
上手くいけば彼を休ませることができるかもしれない。