第80章 再生の道へ
「って、それよりあれ。何してんの?丸刈りとか神田言ってたけど…」
ふと思い出したように、稽古中のアレンと神田に目を向けたジョニーが周りに問いかける。
稽古というよりも、それはもう手も足も出るただの殴り合いと化していたが。
「や。始めはただの剣術稽古だったんだけどさ…あの二人、妙に苛々してて。もー扱い辛いのなんのって」
「イライラ?」
溜息混じりに振り返るラビに、つられて南も砂地の稽古場へと目を向ける。
「テメェッ!ヘバッたフリしてやがったなッ!!」
「騙まし討ちも立派な戦法です」
「もう死ね!この似非紳士野郎ッ!!!」
「師匠が似非者なもので」
ブチ切れながら拳を打ち込む神田に、同じく拳を返しながら似非笑いを浮かべるアレン。
笑っている。
がしかし目は笑っていない。
「気付いたらもう彼是1時間こんな感じ。負けたら丸刈りらしいさ」
「ああ…」
「だから…」
「もうただの殴り合いさな」
成程。
ラビの説明にやっと状況を理解できた南とジョニーは、納得とばかりに頷いた。
「でもアレンも神田もまだ外出禁止だったような…大丈夫かな。あんなに派手に戦り合って」
「えっそうなの?」
心配そうに呟くジョニーに、南は驚き思わずその顔を凝視した。
そういえばラビだって外出許可は来週だと言っていた。
同じに酷い怪我を負っていたアレンと神田も、いくら鍛えているエクソシストと言えども婦長の厳しい許可は下りていなかったらしい。
「あの襲撃がよっぽど悔しかったんだろう。特にアレンの奴は、あんな性格だから…きっと抱え込んでいるんじゃないか」
力のない苦い笑みを浮かべて呟くマリの言葉に、ジョニーははっとした。
科学班の皆がAKUMAに襲われて、レベル4が目の前に立ちはだかった時、ボロボロなアレンに助けを乞うたのは自分だった。
皆を助けて、と。
涙を流して懇願した。
あの言葉はもしかして、彼の責任感ある性格の重みとなってしまったのではないか。