第79章 無題Ⅱ
「…ぇ……ぁ…?」
開いた掌を見下ろす。
ぱらぱらと落ちていく白い砂糖のような粒。
……タップ…?
「…ぁ…ッ」
タップ
「…あ…あぁああ…ッ」
タップ
「うぁあああああ!!!!!!」
声がする
咆哮
泣いてる
ジョニー
「ッ───」
唇が戦慄く。
目の前の粉粒と化したタップに縋るジョニーの姿が、一気に滲んでぼやけた。
「時間さ」
急に体が宙に浮く。
包まれたのは、さっきまで馴染んでいた匂い。
ラビの、体。
私が何か言葉を発するよりも早く、抱き上げられた体は背を向けて、視界の中にあるタップであったものを外された。
何も見えない。
ラビの真っ黒な服しか。
「ッ…」
5分経てばどんなに足掻いても医務室に連れていくと、彼は言っていた。
だけど今の私に足掻く余裕なんてなかった。
「ッ…ぅ、ぁ…」
わかってた。
頭の隅にほんとはずっと在ったもの。
他のスカルにされた人は助からなかった。
全員、粉粒のように消え去っていたから。
わかってた。
本当は、わかってた。
でも、もしかしたらって思ったんだよ。
「ぅあ…ッああ…!」
私でも助けられるかもしれないって、そう。
「ああ…ッあ、ああ…ぁあ…ッ!!!」
目の前の服に顔を押し付ける。
体液という体液が溢れて、上手く呼吸もできずに咽び泣いた。
幼い子供のような咆哮。
ラビは何も言わなかった。
静かに彼の腕に運ばれながら遠ざかる。
ジョニーの叫び声。
リナリーの泣き声。
ロブさんの呻き声。
リーバー班長の───
そうして 私の知る世界は 終わりを告げた