第14章 デンケ村
「大丈夫ですか?」
「う…うん…」
跳び下り下車してしまった…。
車掌さん、ごめんなさい。
鉄槌を使っての飛び降りは、一瞬だった。
アレンにしっかり抱きかかえられていたから、衝撃も然程なく森の中に着地することもできた。
でも心臓に悪い。
エクソシストにとって、これが日常茶飯事なんだ。
…常人離れしてるってよく言われるけど…身を持って実感しました。
「方角としては、こちらですね」
なんとかバクバク鳴る心臓を抑えて、息を落ち着かせる。
エクソシスト同様、体を鍛えてるファインダーのトマさんもケロッとしたもの。
コンパスを手に誘導するそんな彼の後を、ついて歩く。
列車から見下ろす森は綺麗だったけど、実際に踏み込むと深く暗く、迷い込むと出られなさそうな怖さがあった。
「どんな村なんでしょうね」
「元々余所とは、あまり交流を持たない村らしいんだって」
コムイ室長に貰った情報を思い出しながら獣道を歩く。
森の中にひっそりと存在する小さな集落、デンケ村。
その村の情報は少なく、多くが謎だった。
「じゃあその行方不明者が出てるって情報をくれた奴は、誰なんさ?」
「それは我らの同胞。調査任務に出ていたファインダーです」
両手を頭の後ろにかけて、ふと疑問を口にするラビに応えたのはトマさん。
基本、先にファインダーの皆が各国を回って、怪しいことは片っ端から調査していく。
そしてイノセンスの可能性があるとエクソシストが派遣される。
ファインダーの仕事は地味なのに大変で偉いなぁとつくづく思う。
「その人は今、村に?」
「ええ、そのはずですが…今日の朝ぱったりと連絡が取れなくなってしまって」
「えっ大丈夫なんですか」
「……その安否も確かめに行くつもりです」
力なく苦笑するトマさん。
心配なんだろうな…同じファインダー仲間だし。
「AKUMAの情報は直前まで一切ありませんでした。なのでAKUMAに襲われたとは考え難いですが…」
「それは、此処で確かめてみるさ」
足が止まる。
薄暗く深い森の中、まるで忍び寄る影のようにそれは静かに目の前に姿を現した。
「此処が、デンケ村」
どこか物悲しげな雰囲気を纏った、小さな村。
その入口が目の前にあった。