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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「テメェなんの為に教団に入ったんだよ」



ユウの言葉に、コムイの体がピクリと止まる。

なんの為にこの教団の"室長"になったのか。
そんな理由、此処で働いてる皆が知ってる。






"おかえり、リナリー"

"ただいま、兄さん"






この教団を恐怖の対象としてしか見られなかったリナリーの、笑顔を取り戻す為に。
この黒の教団が、彼女が心から"ただいま"と言える場所である為に。



「…行けよ、コムイ。じゃねぇとマジでその足折るからな」



その背中を押す。
今のオレはそんな言葉でしか押せねぇけど。



「っ…」



覚束無い足で、でも確かに踏み出したコムイの足。
その遠ざかる背中を見て、深い溜息と共にその場に座り込んだ。

ったく…オレよりずっと大人だってのに手間かかる奴さ。



「………」



…大人なんて関係ねぇか。



「…さんきゅ、ユウ」



オレの胸の奥から溢れ出しそうになっていた"何か"。
それはユウの鉄拳のお陰で、なんとか堰き止めることができた。
ヘラと笑って見上げた顔は、眉間に皺を寄せたまま。
その体はオレ同様にボロボロだった。
やっぱレベル4にやられた傷はでかかったらしい。



「…テメェ何そんなイラついてんだ」

「へ?」



すると思い掛けない言葉をかけられた。
じろじろと見下ろしてくるユウの顔は険しい。



「あー…駄目だよなぁ…オレ。ジジイみたいには早々なれねぇさ」



苦笑混じりに頭を掻く。

ジジイみたいに常に冷静な心で物事を傍観する。
ブックマンには必要なこと。
だけどそんな鉄みたいな精神、中々オレには作れないらしい。
…まだまだブックマンを名乗るには未熟な心だ。



「そういや…ユウは第五研究所に行ったんさ?」



ふと思う。
もしかしてユウもアレンみたいに助けに行って、見ているかもしれない。
南達の末路を。

そう思うと無性に気になった。



「行ってねぇよ。コムイの護衛についてた」

「……そ」



…なんだ。

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