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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「動けない体をイノセンスで無理に操ってるのか…!」

「…っ」

「アレンくん!?」



コムイの問いに応えることなく、再び地を蹴りレベル4へと向かうアレン。
恐らくその攻防だけで精一杯なんだろう。
瀕死の体を更に痛め付けて戦ってる。



───ィイイン…



鳴が耳に届く。
音を辿るように見れば、通路の上で強く増している光があった。



「リナリ…ッ"黒い靴"と共鳴し始めたのか…!?」



…恐らくコムイの言う通りだろうな。
リナリーは、自分の体を使ってイノセンスとシンクロしようとしてる。
コムイを守る為に。



「…行ってやれ…コムイ」



痛め付けられた体は上手く動かない。
歯を食い縛って、壁に背中を預けながら言葉を投げかけた。



「あいつはお前の為に生きてる…わかってんだろ」

「………」

「傍にいてやれよ……兄貴だろ」



お互いが何よりお互いを思い合ってる。
んなもん、見ていてわかる。
一番必要としている奴が、されてる奴が、傍にいなくてどうするんさ。

行けるだろ。
その足で向かえるだろ。
オレを閉じ込めた部屋のような隔たりは、今の二人の間にはない。



「…ッ…僕は…どうしてやればいいのか…わからないんだよ…」



背中を向けてるコムイの表情は見えない。
だけど俯いて拳を握って、その発せられた震えた声でなんとなく予想はできた。

コムイの言葉もわかる。
リナリーの"兄"としてだけじゃない。
この黒の教団の"室長"としての自分もいるだろうから。

色んなもんに挟まれて身動きできずにいる気持ちは…わかる。
オレもそうだったから。



…でも、悪ィな。



「…ざけんなよ」



今のオレにはそういうもん全部、関係ねぇんさ。

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